
【合格レポート例】人文地理学:千葉県各市町村の特化係数による都市機能分析
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そこでは、最初から完成形を持ち寄るわけではありません。
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今回は、各種統計データと「特化係数」を用いて、特定の都道府県(千葉県)の都市機能を客観的に分析・考察する都市地理学(地誌学)のレポートをご紹介します。図表は省略しています。
都市地理学:特化係数を用いた都市機能分析(千葉県)
【課題】
都市機能について考察したうえで、任意の都道府県を選択し、そのすべての区市町村について、昼夜間人口、各種産業の生産額等、細かい分類で10項目以上の統計指標を選定し、都道府県全体を基準とした特化係数で分析して、各区市町村の都市機能特徴や機能分担についてまとめてください。(2,001字以上3,000字以内)
1 都市機能とは何か
都市機能とは、都市が持つ都市としての機能を指す語である。電気や水道の供給、交通手段の提供、行政機能、商業、教育、観光の場としての機能などが含まれる。
都市は、その周囲の地域に対して、その中心となる働きをする場合が多い。都市は周囲に対して工業製品を供給したり、買い物や娯楽などのサービスを供給したりするかわりに、周囲の地域から食糧や原料、労働力などを得ている。
都市が周囲の地域を引きつける力を中心性、あるいは中心地機能という。その力の及ぶ範囲(都市圏)にはいくつかの段階があり、階層構造をなしている。
都市をとらえる際には、都市を「点」としてその位置をみる場合と、「面」としてその広がりをとらえる場合がある。
2 千葉県の都市機能の特徴
千葉県は、東京に面し、また海に囲まれた地域である。そのため、東京のベッドタウンになっている地域と漁村・農村の双方が存在している。この大きく異なった地域を内包している点がその特徴である。
本レポートでは、人口に関するデータ(表1 平成27年4月1日現在、男女別、年齢(3区分)別人口、表2 平成22年国勢調査、千葉県、市町村別人口、昼夜間人口比率)、産業に関するデータ(表3 平成21年、千葉県、市町村、企業産業(大分類)別企業数(会社企業))をもとに述べていく。なお、本レポートの表では、小数点以下を見やすくするために、特化係数を100倍して示している。
1)人口に関する特徴
東京に隣接するベッドタウンの地域であることから、千葉県内には人口が密集した地域とそうでない地域が明確にあらわれている。図1には、表2より作成した人口密度が特化係数で千葉県よりも上回った市町村を示した。千葉県の人口密度は、1205.48人/$km^2$である。これを上回った地域は、千葉県の北西部である。市川市、松戸市、習志野市、浦安市といった特化係数が6を超える地域もある。これらの地域は、東京への通勤が便利なところに立地している。
千葉県北西部以外は人口密度が低い地域である。これらの地域では、高齢化が著しく進行している。図2には65歳以上の割合の特化係数が1以上の市町村を示した。千葉県北東部(北総)と半島部(房総)の市町村はほとんどが1以上であり、高齢化が進行していることがわかる。逆に北西部は15歳未満が多い。図3に15歳未満の割合の特化係数が1以上の市町村を示した。
このように千葉県の人口構成は、北西部とそれ以外で大きく異なっている。北西部の住人は主に東京で就労し、それ以外の地域は、その地域内の拠点都市で就労していると思われる。そのことは、図4の昼夜間人口比率の特化係数が1以上の市町村から類推できる。千葉県の昼夜間人口比率は89.5%であることから、県全体として昼間人口が夜間人口を下回っていることになる。この水準よりも下回っている市町村がこの図では白、上回っている市町村が青である。北西部の市町村の多くは下回っている。北総や房総は上回っている市町村が多い。交通機関が未発達なこともあり、地域間を移動するよりはそれぞれの地域内で行動が完結しているように思われる。
2)産業に関する特徴
先に述べたように、千葉県は、北西部とその他の地域で性格を異にしている。この点は、産業からも顕著である。
図5には、農業、林業の特化係数が1以上の市町村を示した。北東の北総地域と半島部の房総の多くの市町村は1以上を示している。北総地域は利根川流域で、水郷と呼ばれる早場米の産地であり、8月下旬には米を出荷することができる。房総地域は千葉県内では比較的標高が高い地域である。また、非常に暖かい地域であることから、花や柑橘類等の果物の栽培が盛んである。
図6には、漁業の特化係数が1以上の市町村を示した。日本有数の港である銚子港を抱える銚子市をはじめ、九十九里浜、房総半島、いずれも海岸線沿いで漁業が営まれている。かつては浦安市など、東京湾沿いでも漁業が営まれていたが今は激減している。東京湾沿いでは南部では漁業が営まれているが、北部では京葉工業地域の発達に伴い、漁業は衰退している。
図7には製造業の特化係数が1以上の市町村を示した。この配置は、京葉工業地域の存在から考えると、やや違和感が残るものである。というのは、浦安市、習志野市、千葉市、市原市、袖ケ浦市といった京葉工業地域を構成する市町村が含まれていないからである。おそらく、これらの市町村では他の産業も発達していることから、製造業の比率が相対的に下がったのではないかと思われる。
では、これらの市町村では、どのような産業が発達しているのだろうか。そのひとつが、図8に示した学術研究、専門・技術サービス業の特化係数が1以上の市町村である。千葉市や浦安市、習志野市のみならず、北西地域の市町村では、学術研究、専門・技術サービス業の割合が相対的に高い。逆に北総、房総地域ではほとんどが千葉県平均を下回っている。北総や房総でも拠点となる市町村では、このような専門的な事業を営む企業が極端に少ないことから、地域住民の生活に大きな困難をきたすおそれもあるのではないだろうか。
図9には教育、学習支援業の特化係数が1以上の市町村を示した。学習塾等の教育産業が含まれる。これは、図3の15歳未満の割合が高い地域に重なっている。
図10には、医療、福祉の特化係数が1以上の市町村を示した。医療、福祉の対象者の多くは、65歳以上の高齢者であると思われる。しかし、この図と図2の65歳以上の割合が高い地域はそれほど多くは重なっていない。特に北総部は高齢者が多いのに比して医療、福祉が低いことが顕著である。この点、地域医療、地域福祉に課題があると予想される。
3 まとめ
以上、千葉県の人口と産業の面から千葉県の市町村の機能の特徴について述べてきた。これまで、千葉県内の市町村に限定してその特徴を述べてきたが、現実の千葉県について述べる場合、それでは不十分である。
というのは、千葉県は隣接する東京都、埼玉県、茨城県との関係が深いからである。本論で一部述べたが、千葉県北西部は東京都のベッドタウンになっている地域である。東京都に昼間人口が吸収されている。そのため、千葉市を中心とした都市機能の分布になっていないのではないかと思われる。
もうひとつ、他県と関わりが強い地域が、北総地域である。茨城県南部には鹿島臨海工業地帯が存在する。ここで就労する者も多く、ベッドタウンになっているのである。
このように考えると、千葉県を分析する場合には、隣接県も検討していくことが必要であると思われる。
【引用・参考文献】
人口・面積・人口密度、2015「平成22年国勢調査、千葉県市区町村別昼間人口・昼夜間人口比率」
、2015年12月29日最終閲覧 http://demography.blog.fc2.com/blog-entry-6274.html 千葉県、2013「平成21年(2009年)経済センサス――基礎調査結果〈確報〉第7表 市町村、企業産業(大分類)別企業数(会社企業)」
、2015年12月29日最終閲覧 https://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/keizai-census/21kiso-kakuhou.html 千葉県、2015「広域市町村圏関係一部事務組合」
、2015年12月29日最終閲覧 https://www.pref.chiba.lg.jp/shichou/kouiki/kouiki/documents/ichikumi270331.pdf 千葉県、2015b「千葉県年齢別・町丁別人口平成27年度 第1表男女別、年齢(3区分)別人口――県・市区町村・11地域」
、2015年12月29日最終閲覧 http://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/nenreibetsu/h27/h27-index.html テクノメイト、2012「テクノコ白地図イラスト 12千葉県」
、2015年12月29日最終閲覧 http://technocco.jp/n_map/0120chiba.html 平澤裕二他編、2011『新編 地理資料』東京法令出版
【まとめ】「特化係数」による客観的分析と、仮説を立てる力の重要性
いかがでしたでしょうか。今回は、統計データを用いて千葉県の都市機能を分析したレポートをご紹介しました。
このレポートの素晴らしい点は、ただ漠然と「千葉県にはこんな地域がある」と語るのではなく、「特化係数」という客観的な指標を用いて各市町村の特徴をあぶり出している点です。特化係数を使うことで、「その地域が全体の中でどの産業に特化(依存)しているか」が明確になり、説得力のある分析が可能になります。
また、データから見えた「違和感」に対して自分なりの仮説を立てている点も高く評価できます。例えば、京葉工業地域であるはずの市原市などで「製造業の特化係数」が低く出たことに対し、「他の産業も発達しているため相対的に比率が下がったのではないか」と考察し、学術研究や専門サービスのデータを確認してその仮説を裏付けています。
統計データを扱うレポートでは、グラフを作って満足するのではなく、「このデータが示している意味は何か?」「なぜこの数字になったのか?」と踏み込んで考えることが非常に重要です。ぜひ、このレポートの分析プロセスを参考にしてみてください!

















